金継ぎの工程
割れたり欠けたりした器を漆の接着力で継ぎ、金粉をはじめとした金属粉で装飾する「金継ぎ」。その工程は、湿度(約80%)と温度(25℃前後)によって乾くという漆の特性ゆえ、次の工程へ進むのに時間がかかり、完成までおよそ2ヵ月以上を要します。基本的な工程をご紹介しましょう。
1.割れた器
直したい器の特徴を観察しましょう。割れた片の間に欠けた部分はないか、表面の釉薬は浸み込みやすいかなど…。
2.生正味漆(きじょうみうるし)を塗る
割れた接面に生正漆を塗り、軽く拭き取ります。生正味漆は接着力が強いために予備的に塗ります。
3.糊漆(のりうるし)で破片をつなぐ
続飯(そくい)をつくり、生漆を混ぜて糊漆をつくります。糊漆を割れた破片の断面に塗り、破片をつないで形をつくります。
4.刻苧(こくそ)で欠損部を補填
続飯(そくい)と地粉(じのこ)、刻苧綿、生漆を混ぜ、刻苧をつくります。刻苧で欠けた部分を補います。
5.錆(さび)で欠損部の細部まで形成
刻苧をサンドペーパーで研ぎ、形を整えます。さらに砥粉(とのこ)と生漆を練った錆を塗り込みます。
6.錆を研ぐ
乾いた錆はサンドペーパーなどを使い、接合部分や補った部分の表面を研ぎます。器が割れる前の形を再現します。
7.呂色漆を塗る
接合部分に呂色漆を塗り、乾かします。サンドペーパーで表面を研ぎ、凹凸がなくなるまで、呂色漆を塗り重ねる作業を繰り返します。
8.赤漆を塗る
形および凹凸のない表面が完成したら赤漆を塗ります。一般的に金粉を蒔くときは赤漆、銀粉を蒔くときは呂色漆を下地に使用します。
9.金を蒔く
金粉は24金(純金)をパウダー状に加工した丸粉(まるふん)を使用します。金粉を万遍なく蒔き、乾かします。
10.金継ぎされた器
蒔いた金粉が乾いたら、生正味漆を塗り、粉固め(ふんがため)をします。最後は磨き粉などで研いで完成させます。